離婚事件などでの法テラスのひとり親世帯に対する弁護士費用償還免除制度
法テラスのひとり親世帯に対する償還免除制度について
令和6年4月1日から、ひとり親世帯への支援策の一環として、一定の場合の養育費請求や離婚事件などでの法テラスの立替金の償還(返済)を免除する要件を一部緩和した新たな免除制度が新設されました。
法テラスの民事法律扶助制度は、経済的に余裕のない方などが法的トラブルにあったときに、無料で法律相談を行い(「法律相談援助」)、必要な場合、弁護士・司法書士の費用等の立替えを行う業務です。
立て替えられた弁護士費用の法テラスへの返済(償還)の免除は、利用者が生活保護を受給している場合で、法テラスの承認を得られた場合でなければ、認められていませんでした。
離婚事件、養育費請求など、法テラスの利用の前後で利用者の経済状況が変化する場合などには、弁護士のサポートが必要なのに費用の負担を考えると、弁護士に依頼することがためらってしまう方もいたかもしれません。
今回新設された「ひとり親世帯に対する償還免除制度」は、一定の条件で、離婚事件や養育費請求などでの弁護士・司法書士の償還免除の申請ができるというものです。
今まで弁護士に依頼することを躊躇っていた方にとって、大きな変更となりました。
今回は、法テラスの「ひとり親世帯に対する償還免除制度」について説明します。
1.まず、ひとり親免除の要件について、説明します。
法テラスの資料によれば、次の(1)~(3)の要件を満たす必要があるとの事です。
(1)以下に定める「ひとり親」であること
A 免除申請する援助事件において養育費の支払を請求したこと
B 免除申請時において法律上の婚姻関係を有しないこと
C 免除申請時において義務教育対象年齢までの子と同居し、かつその子を扶養していること
(2)資力要件(収入要件、資産要件)を満たすこと
生活保護を受給していない方が償還を免除されるには、収入要件、資産要件の全てを満たす必要があります。収入要件、資力要件については、法テラスHPでご確認頂くか、弁護士までお尋ね下さい。
なお、免除申請後、6か月以内に資力要件を満たさなくなった場合は、免除を決定することはできません。そのため、免除申請時に要件を満たしていても、免除を決定できるのは、申請から半年以上経過後となり、その間の償還は猶予します。
(3)援助事件で決定された償還充当額を償還済みであること
事件の相手方等から金銭等を得た、または得る見込みがあり、援助事件において償還充当を決定された場合は、その金額を返済するまで、免除することはできません。
2.ひとり親免除は、すべての事件に対して認められる制度ではありません。
法テラスによれば、ひとり親免除の対象となるのは、以下の援助事件(ただし、養育費を請求した相手方と、同一の相手方の事件に限ります。)の立替金です。
これ以外の援助事件の立替金については、通常の免除要件に基づき判断する事になります。その結果、以下の対象事件の立替金の償還のみ免除となり、これ以外の援助事件の立替金は、償還していただく場合があるとの事です。
(1) 養育費請求事件
(2) 養育費増額請求事件、養育費減額請求事件
(3) 離婚等(離婚、親権、財産分与、年金分割及び慰謝料)請求事件
(4) 親権者変更申立事件
(5) 婚姻費用分担請求事件
(6) 婚姻費用増額請求事件、婚姻費用減額請求事件
(7) 監護者指定・子の引渡し請求事件
(8) 面会交流請求事件
(9) 配偶者暴力等保護命令事件
(10) 認知請求事件
(11) 離縁請求事件
(12) 以上の事件の強制執行事件
(13) 以上の事件の保全事件
3.今回の「ひとり親世帯に対する償還免除制度」の新設によって、一定の事件について、弁護士に依頼しやすくなりました。
養育費や婚姻費用がきちんと支払われないと、お子様の生活にも影響が及びます。
そのような事態に直面した際に、弁護士費用をためらって泣き寝入りするという方がひとりでも少なくなれば幸いです。
弁護士としても、まだ、始まったばかりの制度なので、どういう運用がされていくのか不明な部分もあります。今後も、注視していきたいと思います。
水戸ひばり法律事務所