親の監督責任
平成27年4月9日の親の監督責任に関する最高裁判所の判決が、昨年、ニュースとなりました。
事実関係は、判決文のよると、下記の通りです。
・当時11歳の男子児童が放課後、児童らのために解放されていた校庭で使用可能な状況で設置されていたサッカーゴールに向けてフリーキックの練習をしていた
・男子児童のキックがゴールの後方10メートルの場所にある門扉(1.3メートル)を超えて橋の上を転がり、道路上に出た
・自動二輪車を運転してきた被害者(事故当時85歳)がボールを避けようとして転倒した
・被害者は、骨折等の傷害を負い、入院中に誤嚥性肺炎で亡くなった
高等裁判所では、本件ゴールに向けてサッカーボールを蹴ることはその後方にある本件道路に向けて蹴ることになり、
蹴り方次第では本件道路に飛び出す危険があるから
親にこのような場所では周囲に危険が及ぶような行為をしないよう指導する義務、
すなわちそもそも本件ゴールに向けてサッカーボールを蹴らないよう指導する監督義務があり、それを怠った
として、親に対する損害賠償請求を一部認容しています。
しかし、最高裁は、親の監督責任を否定しました。
・本件ゴールに向けてボールを蹴ることは、(この事例の各事情では)通常は人身に危険が及ぶような行為ではない
・親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は、ある程度一般的なものとならざるを得ない
→通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合には当該行為において具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、
監督義務を尽くしていなかったとすべきではない
最高裁の判決文は、裁判所のホームページにも出ています。
法解釈におけるバランスが難しい事例だと思います。
今年、線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の妻と長男の損害賠償責任が否定された判決も出ています。
今後も、判決の動向を注視する必要がある分野です。